LEAP DAY(リープデイ)は沖縄の学生を対象とした人財育成プログラム『Ryukyufrogs』の成果発表の場として2012年から始まり、2017年より那覇市で開催される総合的なカンファレンスイベントとなりました。今年度(LEAP DAY2023)は、教育・人財育成をテーマに12月16日-17日の2日間開催いたします。
今年のLEAP DAYのテーマ「変えたくない未来、変わる未来」では、一人一人が未来に残したい大切なことや、現状を変化させるために今変えたいことを皆さんと一緒に考えていきたいという思いで今年のコンセプトが決まりました。
社会が目まぐるしく変化する今日において、時代の変化に合わせて改めて日本の未来について考える機会は、皆さんにとっても様々な気づきや学びをもたらしてくれることでしょう。
今回の記事ではそういったLEAP DAYの思いに共感し、支援をしてくださっている株式会社日本総合研究所 大森充さんの取り組みについてご紹介いたします。
ーーまず初めに、大森さんのこれまでの経歴も含めた自己紹介をお願いします。
京都大学大学院を卒業して日本総合研究所に入社し、民間企業を中心にコンサルティング業務を行っています。私の入社がリーマンショックのあった時代だったこともあり、同期入社は3人しかおらず、さらには入社1年目に東日本大震災が起きたこともあって、「なんだか大変な世の中だなぁ」っていう入社時の印象があります。
今も不確実性が高い時代なんて言われていますが、当時の日経新聞の一面もそんな記事が多く、もちろん、景気も悪かったことから、コンサルティングテーマは事業再生やM&Aの案件が多かった気がします。そういったテーマの案件はまずはコストカットして、生み出したキャッシュを新規事業に投資するっていうのがセオリーなんですが、私の大学院の専攻が事業再生だったこともあって、入社3年目ぐらいまでは再生案件ばかりを担当していた気がします。ただ、その時感じたのが、コストカットはPLやBSが読めるコンサルタントであれば比較的できる業務ということと、「絞る」とか「無駄をなくす」といった割とネガティブ志向に陥るので自分に合わないかも、ということでした。
一方で、せっかく生み出したキャッシュを投資して事業を生み出すことは結構難しく、ロジックを詰めた後はクリエイティブジャンプして事業を生み出すことは自分に合っているなと思い、入社4年目以降は新規事業開発のお仕事を中心にやってきました。入社7年目ぐらいに、米国AIスタートアップの日本法人代表に従事する機会があり、2019年末ぐらいまではスタートアップ経営をしていました。自分たちで一からオフィスを作り上げていくところから始めましたが、とてもエキサイティングでした。
その後、2019年以降はこれらの経験に基づき、プライム上場企業のDX顧問をしたり、米国の経験を踏まえてESGやSDGsの研究を進め、CSV型の事業開発に従事したり、民間企業のサステナビリティ経営を支援したりしています。
ーー経歴からもたくさんお聞きしたいことがあるんですが、まず日本総研に入った理由をお伺いしたいです。
はい、私はもともと医師になることを目指してたんです。結果的には、医学部に入らず経済系の学部に入ったわけなんですけど、外科医になりたかったことを考えると、目の前で困った人を助けるようなことがしたかったんだと思います。そんな経緯もあって就職活動時に、企業のお医者さんと言われるコンサル業っていうのに興味を持ちました。そして、学生の頃に日本総研で病院経営に携わるインターンをやらせていただいたことがあって、 直接お医者さんになって患者さんを治すよりも、病院の経営全体を治した方が助かる患者の数が増えるかも、と思い、コンサル業を生業にすることに決めたのを覚えています。なので、例えば私がこれから勉強して6年後にお医者さんになるより、専門的に学んだ経営の知識を使って組織や企業に対して仕事をした方が、ソーシャルインパクトを出せるんじゃないかと思ってコンサルティングファームに入ったっていう感じですかね。
コンサルティング会社の中で、日本総研を選んだのは、自由だったからです。当時、外資系コンサルやその他のシンクタンク系コンサルからも内定をいただいたんですけど、リーマンショックがあったこともあり、戦略コンサル業務ができない部署に行く可能性もあると言われてました。でも、日本総研はもう好きなことやっていいよっていう自由な感じがしたので入社を決めました。まぁ、ただの放置プレイっていう疑いもありますが(笑)
ーー米国AIスタートアップの日本法人の代表になってから、特に大変だったことはなんでしたか?
周りを巻き込んでいくことですかね。私は昔からあまり群れずに、何事も比較的1人でできちゃうタイプだったんで、特に人の助けも必要とすることなく生きてきたんです。でも曲がりなりにも経営者になった時に、1人でいろいろやることの限界に気づいたんです。オフィスを作ること1つとっても椅子を買ってきて20脚組み立てるだけでも大変だし、私がトップ営業はするんですけど、みんなが動いてくれないと全然売り上げは上がりません。そこで私も変わらないと!大森2.0にならないと!と思いました(笑)。それから、後輩や先輩に対しても「ちょっと暇やったら助けてくれません?」みたいな感じでやってたら、社員じゃない人もパートで手伝ってもいいよとか、ボランティアでやるよとか、正社員になりたいですみたいな人も増えてきて、こういうのが渦を作るってことなのかなっていうのを勉強しながらやらせていただいてました。
あとは、創業が米国の会社なので米国とのやりとりは大変でした。米国からは日本のトップとして見られるので、ラスベガスで全従業員が集まるオールハンズミーティングを毎年やってたんですけど、ちょっとカジノでもやりながら経営ミーティングしましょうっていうラフな感じだと思っていたら、「日本はどうなってんだ」みたいなことを聞いてくるんです。結局カジノなんか全然できなくて、深夜までずっと質問責めにあって、経営者って大変なんだなって思いました。
ーーその後、ESGやSDGsについての本を出版されていますが、その経緯を教えていただけますか?
はい、米国AIスタートアップ経営から降りた2019年くらいに中央公論新社から『1冊で分かる! ESG/SDGs入門』という本を出版しました。というのも、米国の起業家の皆さんは結構、社会課題解決型で創業されているケースも多く、彼らと話すと、「何のためにこの会社が存在するのか」っていう目的を聞かれることが多く、そこに感銘を受けたことがありました。今でいう、パーパスだと思うんですが、当時、AIテクノロジーを使って社会にインパクトを与えたいというのはあったものの、どう与えるか、誰に与えるか、どんな社会課題を解決したいのか、って正直あんまり考えてなかったんです。なので、そこからESGやSDGsを勉強し始めて、これを日本の皆さんにも知らせたいなって思って1冊の本にまとめました。そこから、SDGsに代表される社会課題を解決していくような事業開発の支援もさせていただくようになりました。
でも、やったことのない人間が教えることの限界もあるのかなと思い、自分で社会課題を解決する事業を作るべきかなと思って、今年の6月に、サーキュラー型のオンラインクリーニングビジネスを始めさせていただいています。
ーー社会性と事業性を両立した企業が今求められてきてると思うんですけど、そこを両立するのってすごい難しいなと思うんですがなにか打破する方法やコツがあれば教えていただきたいです。
そうですね。今は工業時代とデジタル時代の端境期であるということをまず認識することが重要だと思っています。
多くの企業は経済中心であった工業時代に作り上げたビジネスモデルを、デジタル時代に無理やりあてこもうとしていることに無理があると思っています。これまでのビジネスモデルに、とってつけたかのようにSDGsのフラグを貼り付けて、「社会課題解決事業です!」っていう会社もいますが、そうであればSDGsなんて生まれないですからね(笑)
なので、ビジネスモデルを左において社会課題を右に置くのではなく、SDGsに代表される社会課題を右においてそれを解決するためにどのようなビジネスがこれからのデジタル時代に必要かを考える必要があります。
DXなんてよく言われますが、次世代の収益源を獲得するビジネスモデルを構築することが日本のすべての企業に課されている課題であり、それこそがDXの本質だと思っています。単なるデジタル技術の活用ではなく、ですね。そういったことが今できてる人たちは、社会課題から興味を持って、この課題を解決するために、デジタルなどの最新技術を使ってどうやってビジネスを組成するかを考えているんだと思うんです。多分そっちの方向性で検討することが社会性のある事業創出がうまくいくコツかなと思ってます。
よく新しいことをやるには黒船と宣教師と出島が必要って言われてるんですけど、ちょっと離れた出島組織でその次の事業を作る宣教師みたいなリーダーが必要で、そのリーダーが例えばシリコンバレーで黒船を見てきたからこれをやってみようよ、みたいな導き方が必要なんだと思います。でもその宣教師になり得る人を既存事業をぐるぐる回してた人たちが兼務でやるのはちょっと難しいと思います。
ーーすごくわかりやすくて理解できました。既存事業に当て込むんじゃなくて、新たに自分たちのリソースを使って何か生み出していくことが大切なんですね。
ーー今回、大森さんにはトークセッションに参加していただくんですが、その内容をちょっとだけ教えていただいてもいいですか?
はい。今回セイコーエプソンの𠮷田潤吉さんとお話をするんですが、彼と話すようになったきっかけが、コロナで生活様式が変わったよねっていう価値観の共有から入ったんです。そこから、これからどんな生活様式に変わるのかっていうのを、未来予測じゃないですけど、一緒に検討してきた背景があります。で、その中で「学ぶ」と「働く」はキーワードとして大きいよねとなりました。とくに「学ぶ」ってなってくると、例えばこれからデジタル化が進み、紙やノートを使わなくなった時に子どもたちのクリエイティビティが統計的に見たら減ってしまったり、記憶定着が弱くなったりしちゃったら良くないですよね。
今回のトークセッションの中では子どもたちがより自分の頭で考えられるようになって、ワクワクする時代を謳歌できるようになるにはどんな学びが必要なのかということと、その学びに対して大人たちができることとして、例えば紙学習を残してあげたいだとか、自分で創造性を働かせられるように体験学習を取り入れてあげたりだとか、そういう話ができるといいんじゃないかなと思います。
それに加えて、実際にセイコーエプソンさんがこういうことが必要だと思い実証実験をやっている事例が何個かあるので、その事例を交えながら良かった点、悪かった点をお伝えできればいいなと思ってます。
ーーその事例を早速聞きたいと思いつつも、それは本番に残しておくことにします。このセッションは、どんな人に届けたいですか?
大きく分けて2つですね。1つは、何かやってみたいとかワクワクしたい子どもたちにぜひ聞いていただきたいなと思ってます。当日もお話ししますけど、コロナ禍で留学できなかったとしても、例えば、広域なプロジェクターを使えばその場にいるかのごとく留学してる気分が味わえたりするんです。なので子どもたちに、これまでの方法でできなくなったことをいきなり諦めなくてもいいんだよっていうのを伝えたいですね。
あとは、起業家の皆さんです。私もスタートアップ経営をしていた身からすると、単独グロースはやっぱり難しくて、大企業のリソース等を活用させていただいてグロースできた経験があります。セイコーエプソンはオープンイノベーションを世界的に推進されていますので、ぜひこの機会に「セイコーエプソンとだったらこんなことできるかも!?」と思ってもらえる起業家の皆さんに聞いてほしいです!
ーーありがとうございます。最後の質問なんですが、今年のLEAP DAYは「変えたくない未来、変わる未来」をテーマに掲げてます。大森さんにとって変えたくないこと、反対に何か変えていきたいことがあれば教えてください。
どんなに外部環境が変わっても、 常にわくわくできるような状態でいたいっていうのは、変えたくないところですね。でも10年前はなかったスマートフォンがあったりだとか、今は生成系AIがあったりだとか、コロナで海外に行くことを制限されたりだとか、どうしても世の中は変わっていくので、自分が楽しかった時代の楽しみ方というものが、10年後は使えない可能性があるんですよね。その未来が来た時に、変わる未来も楽しめるように自分も進化していきたいと思います。
ーーありがとうございました。
大森充さんと𠮷田潤吉さんによるトークセッションは12月17日(日)11:00〜12:10にくくる糸満 多目的室で行われます。
今年のLEAP DAYは、会場でリアル参加いただいた方には、全てのセッションにおいて登壇ゲストと相互コニュニケーションできる設計をしております。会場参加ならではの熱気を感じつつ、参加型でお楽しみください。
LEAP DAYへの参加は無料ですが、事前参加登録が必要となります。こちらから早めにご登録お願いいたします!
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